提言(反論、批判大歓迎)
「あ・は・き法」との軋轢に埋没し、既得権益を失うな!!(その3)
和歌山県知事が昭和4年内務省宛に出した「無資格者に依る医業類似行為を取り締まるつもりは無いか(
大意)」 との問いに、「当面はそのつもりは無いので、そちらで然る可くお取り扱い願いたい(大意)」 と内務省
は回答した。即ち、「自分の方では取締りをするつもりがないので、和歌山県の方で適宜にやって下さい」との
意だ。この辺りは今日の行政と五十歩百歩の様だが、業を煮やしたのは東京警視庁。
特に帝都東京では無資格者の横行への苦情も多く、「何とかせねば社会正義が保ち得ない」と考えたかど
うかは別として、昭和5年11月5日、前述した如く東京警視庁は庁令第43号として「療術行為取締規則」を制
定する。そしてその第1条に「本令に於て療術行為と称するのは他の法令に於て認められたる資格を有し、そ
の範囲内に於て為す診療または施術を除く外の疾病の治療または保健の目的を以て 、光 、熱、器械器具そ
の他の物を使用し、若しくは応用し、または四肢を運用して他人に施術を為すをいう。」と明確に規定し 、療術
を既存の「あはき柔整」と区別している。
医師に独占的に許されている治療を行えば、当然医師法違反、「あはき柔整」と同様な事であれば、それ等
営業取締規則 (当時) 違反として処罰対象になる。即ちそれ以外の方法をもって疾病治療または保健の為に
施術をするのが「療術」と言う訳だ 。そして此の療術は今日では「医業類似行為」の範中に分類される。しかし
此の「医業類似行為」には「あはき柔整」も含まれる。しかも前述した如く 「日本標準産業分類」 に於てはそれ
等全てを「療術」の名の下に一括しているのである。
此の辺りの矛盾が今日の業権論争を更に難解なものとしている。
時の東京警視庁は「あはき」等、他の先行認知業種の業務内容の抵触に対し、厳く一線を画した。此は葢し
当然の事で 、 国家が認めた既得権益を後発の無資格者が奪う等と言う法外な権利が存しない事は言を待た
ない。
所が例の最高裁差し戻し判決は「人の身体、生命に危害を加えなければ行っても良い (大意) 」と、その一
線を崩してしまった。その上で同判決は「有害性の立証」を司直側に課したのである。
そうなって来ると「あはき柔整」と「療術」の区分は極めて曖昧な物となる。線引きをしようにも、「あはき」 に
限りなく近い施術を行っている無資格者の何をとらえて「違反」とするのか 。因みに、指で押すから指圧と言う
訳だが、同様の効果は他の物や手段に依る刺激に因っても惹起可能である。異論は有るだろうが、棒で押し
ても、特殊な導子と波形を使用しての低周波療法でもそれは可能なのだ。
ではどこ迄が療術の範中で、どこ迄行けば違法なのか。そしてそのスレスレで儲けているデタラメ業者 (特
に大手)の論拠は何処に有るのか。更には何故取り締まれないのか。愈々話は業界区分の話に行き着くのだ
が、その前に、デタラメ業者の論法の典型に言及しておきたい。
その典型は 、一人の資格者の下に複数の無資格者を貼り付け、「あはき柔整類似行為」 を行わせる方法
で、俗に言う「大手」にはそれが多い。即ち 「君達の施術行為は最高裁の判決で保護されているからやっても
良い。しかも諸君達を指導、監督しているのは有資格者の先生で 、その指導の通り施術しているのだから合
法で、何の心配もいらない。此の事は我社の顧問弁護士の先生もそう言っている…」
此の論法を説明会等で聞き、法の趣旨も知らず、妙な名誉欲だけが強く、更には簡単に金を稼ぎたい連中
は忽ち我田引水的に納得してしまう。そして 「○○マッサージ」、「○○ヘルス・センター」更には「○○の温泉」
等々で「セラピスト」等の肩書きを以て事故続出の荒療治を行う 。その事故件数が如何に多いか。そして更に
問題提起しなくてはならないのは、「療術師」を自称して施術を行っている無資格者個人の事故よりも、それ等
の有資格者の下での事故の方が遥かに多いと言われる現状なのである。(以下続く)
